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酪農経営診断のまとめ 平成13年

ジャージー種による酪農経営診断成績

 岡山県には現在,育成牛を含め2,596頭のジャージー種が飼養されているが,図26のとおり,昭和62年から増頭傾向にある。このことは蒜山酪農農業協同組合が,昭和62年からジャージー種の生乳に対して奨励金を出し始めたことによるものである。その結果,ジャージー種飼養農家の増頭のみでなく,ホルスタイン種とジャージー種を飼い,生乳をそれぞれの品種ごとに分別出荷している,いわゆる混飼経営でも,ジャージーの比率を高めた結果でもある。

注:農林水産省家畜生産課「家畜改良関係資料」

 平成12年度に経営診断を行ったジャージー種飼養農家は9事例であったが,決算期の関係とデータの精度の関係で,ここでは6事例を紹介する。この6事例のうち4事例がホルスタイン種との混合飼養農家であった。このように対象事例数も少なくジャージー種の飼養割合も異なることから,成績だけを表10〜表13のとおり掲載する。
 ジャージー種の経営を概観すると,飼料自給率が27.2%とホルスタイン種の10.0%に比べて高く,経産牛1頭当たり購入飼料費は218千円で,ホルスタイン種の329千円と比較して3分の2程度に抑えられている。
 一方,売上高に目を向けると,「その他」の額が大きいことに気がつく。これは出荷された生乳に対する奨励金で,表13ジャージー経営損益計算書の「売上高」のなかの「その他」の項目のとおり,特にジャージー種のみの経営においては生乳売上高の47%近い金額が計上されており,経営に大きく寄与していることが理解できる。
 以上の結果,ジャージー種飼養農家における経産牛1頭当たり経常所得額の平均は277千円で,同ホルスタイン種の173千円と比較して経産牛1頭当たりの収益性は高くなっている。しかし,家族労働力1人当たりの経常所得額は3,670千円でホルスタイン種の3,590千円と大きな開きはない。
 このことは,労働力1人当たり経産牛飼養頭数がジャージー種で16.2頭に対し,ホルスタイン種で20.0頭と3.8頭の差があるためで,経産牛1頭当たりの飼養管理労働時間,飼料生産10a当たり労働時間は大差はないが,経産牛1頭当たり飼料生産面積がジャージー種が29.9a,ホルスタイン種で14.4aと,ジャージー種でホルスタイン種の約2倍の作付面積がある結果である。
 このように,ジャージー種の経営は経産牛1頭当たりの収益性は高いが,労働生産性はホルスタイン種と同レベルと言う結果であった。したがって,今後の課題としては飼養管理における省力化と自給飼料生産における圃場集積等による省力化があげられる。