既刊の紹介酪農経営診断のまとめ平成14年

酪農経営診断のまとめ 平成14年

放し飼い方式導入後の経営の推移と効果

 次に、放し飼い方式に着目して、導入後の推移を見ることで、放し飼い方式の導入効果を検証した。
 平成13年は集計対象事例に5事例の放し飼い方式による酪農経営が含まれている。このなかに、過去5年間にわたって経営診断を行ってきた経営が2事例あるので、年毎の平均値を時系列で示した(表5)。
 放し飼い方式の経営は、経産牛1頭当たり産乳量の推移(97年 8,834s、98年 9,009s、99年 8,384s、2000年 9,576kg、2001年 9,392kg)や繁殖成績(平均分娩間隔 97年 13.3カ月、98年 13.4カ月、99年 14.0カ月、2000年 13.7カ月、2000年 13.8カ月)を見ても、技術レベルの高い農家が取り組んでいることが理解できる。
 また一方で、放し飼い方式導入に伴う多額の投資と多額の負債などにより、特に放し飼い方式導入の初期段階で飼養頭数が計画レベルに達せず、頭数と施設のミスマッチが生じ、一時的に収益性が低下している事例が見られるが、ここで紹介する継続事例については、経産牛飼養頭数が着実に増加(97年 82.9頭、98年 92.3頭、99年 96.5頭、2000年 99.8頭、2001年 103.7頭)して当初計画頭数に達したものと思われ、その上で技術レベルが維持できた結果、経産牛1頭当り収益性(経常所得 97年 115,222円、98年 159,093円、99年 171,284円、2000年 208,250円、2001年 293,989円)、労働生産性(労働力1人当たり経産牛飼養頭数 97年 26.8頭、98年 31.9頭、99年 37.9頭、2000年 39.9頭、2001年 42.0頭)ともに改善され、労働力1人当たりの経常所得は97年が3,169千円、98年が5,296千円、99年が6,939千円、2000年が8,609千円、2001年が12,666千円と順調に伸び、他産業従事者の年間給与額4,670千円(前出)を大きく上回っており、経常所得総額でも、97年が9,558千円、98年が14,641千円、99年が16,617千円、2000年が20,749千円、2001年が30,526千円となり、所得総額においても販売農家の8,280千円(農林水産省 農家経済調査)を大きく上回っている。