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次に規模拡大の効果を見ることにする。集計対象22事例のデータを、経産牛飼養頭数規模で30頭未満、30頭台、40頭以上70頭未満、70頭以上の階層に分けて、飼養頭数規模と収益の関係を見た。それぞれの階層に属する農家戸数は、30頭未満が5事例、30頭台が6事例、40頭以上70頭未満が6事例、70頭以上が5事例であった。
各階層の収益水準と収益の多寡に影響を与える主な要因を整理したものが表4である。各階層間を比較すると次のように整理できる。
各階層の経産牛平均飼養頭数は、30頭未満が24.6頭、30頭台が35.4頭、40頭以上70頭未満が47.7頭、70頭以上が100.3頭であった。
各階層の経常所得総額の平均は、30頭未満が3,636千円、30頭台が4,302千円、40頭以上70頭未満が8,571千円、70頭以上が20,587千円であった。
また、経産牛1頭当たり経常所得は、30頭未満が141千円、30頭台が120千円、40頭以上70頭未満が186千円、70頭以上が203千円であった。
一方、家族労働力1人当たり経常所得は、30頭未満が1,836千円、30頭台が2,667千円、40頭以上70頭未満が3,384千円、70頭以上が7,421千円であった。
このように家畜生産性も労働生産性も、大規模層ほど高いという結果となった。
売上高を見ると、30頭未満が805千円、30頭台が835千円、40頭以上70頭未満が901千円、70頭以上が958千円で、大規模層ほど高くなっている。これは経産牛1頭当たり産乳量が、30頭未満が8,029kg、30頭台が8,489kg、40頭以上70頭未満が8,716kg、70頭以上が9,600kgと大規模層ほど高いためである。
次に生乳100kg当たりの生産コストを見ると、30頭未満が8,030円、30頭台が7,731円、40頭以上70頭未満が7,525円、70頭以上が6,886円となっており、大規模層ほど低くなる傾向にあることがわかる。これには規模のメリットによる労働費の削減効果が大きく貢献している。このことは家族労働費を除いた生産コストで比較すると、各階層の差があまり見られないことからも理解できる。
労働生産性を示す指標をみると、労働力1人当たり経産牛飼養頭数は30頭未満が13.5頭、30頭台が19.1頭、40頭以上70頭未満が17.9頭、70頭以上が31.9頭、また経産牛1頭当たり飼養管理労働時間は30頭未満が160.1時間、30頭台が117.4時間、40頭以上70頭未満が114.9時間、70頭以上が75.2時間となっており、飼養頭数規模が大きくなるほど向上している。また、70頭以上の層で飛躍的に向上しているが、この層はフリーストール等放し飼いによる飼養方式(以下放し飼い方式と言う)を採用しており、その成果といえる。
以上の結果から規模拡大に伴う効果を整理すると、飼養頭数規模が大きくなるのに比例して、経常所得総額並びに労働力1人当たりの経常所得額が大きくなっている。特に放し飼い方式を採用している70頭以上の層では経常所得総額並びに労働力1人当たりの経常所得が飛躍的に増加している。このことは、放し飼い方式にすることにより労働生産性が飛躍的に向上して、労働力1人当たりの管理可能頭数が増加したことによるもので、70頭規模以下の繋ぎ飼いによる規模拡大の効果が比較的穏やかであるのに比べて、顕著な効果が現れている。