![]() |
一方で、放し飼い方式の導入は多額の投資が必要となる。投資の回収は順調に進んでいるのか、導入後の推移を見ることで、このことを検証した。
そこで、過去6年間にわたって経営診断を行ってきた経営が2事例あるので、年毎の平均値を時系列で示した(表5)。
まず、経産牛飼養頭数規模の推移であるが、着実に増加(97年 82.9頭、98年 92.3頭、99年 96.5頭、2000年 99.8頭、2001年 103.7頭、2002年 105.5頭)している。
また、これに対し、労働力員数はほとんど変化なく推移(97年 3.10人、98年 2.90人、99年 2.55人、2000年 2.51人、2001年 2.47人、2002年 3.20人)している。
一方、技術レベルを見ると、経産牛1頭当たり産乳量は高水準で推移(97年 8,834s、98年 9,009s、99年 8,384s、2000年 9,576kg、2001年 9,392kg、2002年 9,493kg)しており、繁殖成績も順調に推移(平均分娩間隔 97年 13.3カ月、98年 13.4カ月、99年 14.0カ月、2000年 13.7カ月、2001年 13.8カ月、2002年 13.8カ月)している。
以上の結果、経産牛1頭当り収益性(経常所得 97年 115,222円、98年 159,093円、99年 171,284円、2000年 208,250円、2001年 293,989円、2002年 258,277円)、労働生産性(労働力1人当たり経産牛飼養頭数 97年 26.8頭、98年 31.9頭、99年 37.9頭、2000年 39.9頭、2001年 42.0頭、2002年 35.3頭)ともに、2002年は若干低下したものの、導入初期からは大きく改善され、労働力1人当たりの経常所得も、97年が3,169千円、98年が5,296千円、99年が6,939千円、2000年が8,609千円、2001年が12,666千円、2002年が9,915千円と、成果を上げている。他産業従事者の年間給与額4,300千円(前出)を大きく上回っており、経常所得総額でも、97年が9,558千円、98年が14,641千円、99年が16,617千円、2000年が20,749千円、2001年が30,526千円、2002年が27,583千円となり、所得総額においても販売農家の8,022千円(農林水産省 農家経済調査)を上回っている。
また、経産牛1頭当たり資金借入残高を見ても、97年が672千円、98年が591千円、99年が531千円、2000年が480千円、2001年が394千円、2002年が320千円と着実に減少し、自己資本比率も97年の32.6%から2002年の46.3%まで増加し、経営の安全性も向上している。
このように、投資の回収は順調に進んでいることがわかる。